MICS CABG (低侵襲冠動脈バイパス術) について

今日はMID CAB(Minimally Invasive Direct CABG)とMICS CABGの違いについてお話いたします。基本的にはどちらも小切開(小さい傷)で行う冠動脈バイパス術です。いずれの方法も人工心肺を用いないOPCABなのですが、左胸のちょうど乳首の下あたりを約6~10cm切開して行います。最大の違いは、MID CABでは基本的に左内胸動脈(LITA)と左前下行枝(LAD)のバイパスのみ行う方法を指します(あくまで基本ですので、多少その近傍へのバイパスは行う事もあります。)。MICS CABGは先ほどのLITAとLADの吻合のほかに大伏在静脈(SVG)と他の部位の冠動脈(回旋枝や右冠動脈)への吻合を行います。この場合には大伏在静脈を上行大動脈に吻合します。技術的にはMICS CSBGは難しい手技になります。同じような小さい傷で多くの部位への冠動脈バイパスが行えます。胸の真ん中を切らずにすみ、また人工心肺を使わない手術です。患者様にとってはとてもメリットがあると思います。どんなメリットかというと、胸骨(胸の真ん中の骨)を大きく切らなくてよいので、術後早期から車の運転などが出来ます。また早期に歩行などが行えます。退院までの日数は少ないと思います(通常のOPCABも結構速く10日前後で退院されていますが・・・)。今までの患者様、特に直近30人の方の輸血回避率は、実に90%以上です。傷が小さいことも一つのメリットです。女性であれば乳房の下縁を切開するために、ほとんど目立たなくなります。さらに2013年からは、日本で初めて本格的に両側内胸動脈を使ったMICS CABGを行っています。MICS CABGはアジアの国々でもとても注目されています。これから広く普及するのではないかと思います。特にカテーテル治療とコンビを組むことで、患者様の体への負担もとても少なくなることが期待できると考えています。IMG_3110IMG_0301写真は両側内胸動脈を用、6カ所のバイパスを行ったMICS CABGの患者様の術後のCT検査の所見と傷の写真です。(患者様に許可を頂き掲載させていただいております)

 心臓血管外科医 菊地慶太