心臓手術のための超音波機器

図1超音波を用いた医療機器は医療現場でたくさん使われています。何故かといいますと、超音波は体への侵襲、負荷などがほとんど無いからです。たとえば心臓や腹部に用いる超音波検査、いわゆる心エコーとか肝臓のエコー検査などがそれです。また血流を計測する超音波血流計。これは足などの動脈の血流を計測します。手術では超音波破砕吸引機器という肝臓や心臓弁膜症などの手術で、血管や支持組織を残して、他のものを砕いて吸引してしまう装置。私も心臓の弁膜症や大動脈の手術で好んで用います。他には内胸動脈を採取するときに用いている、ハーモニックスカルペル。これで脂肪を蒸散したり、細い動脈を切離して内胸動脈を採取します。またCABG(冠動脈バイパス術)の時に、超音波血流計を用いて脂肪や筋肉内に深く埋没した冠動脈を探し出して性状の良いところに吻合します。これは私が昔から行っている手技ですが、OPCAB(心拍動下冠動脈バイパス術)だからこそできる手法です。このように沢山の超音波医療機器を用いて安全に治療を行う事が最近のトレンドではないかと思います。新しい医療機器はたくさん出現していますが、それらをいかに使いこなすかが腕の見せ所です。何でも飛びつけばよいというものではありませんが、使いこなすための努力を惜しまない。使いこなせる状態で、しっかりと吟味できる能力を身に着ける事。どんな仕事でもとても大切だと思います。

心臓血管外科医 菊地慶太