心臓弁膜症の治療②

心臓弁膜症の手術治療には大きく2通りの方法があります。人工弁置換術と弁形成術です。人工弁置換術は文字通り劣化した弁を取り除き、新しい人工弁を移植する手術です。この人工弁置換術は昔からある一般的な手術で、代表的な治療法です。人工弁はカーボンなどの金属でできた機械弁と、牛や豚などの生体組織からできた生体弁があります。これらの人工弁を悪くなったご自身の弁と交換する手術です。近年では主に大動脈弁に対する手術が多いのですが、僧帽弁も病状によっては人工弁置換術を行います。人工心肺を用いて心臓を止めた状態で手術を行います。病状によっては小さい切開で手術を行う低侵襲心臓手術(MICS)で手術を行っています。

一方、弁形成術はご自分の弁を修復する治療法です。特に僧帽弁閉鎖不全症が主な治療対象になります。最近では大動脈弁に対しても形成手術を行い始めています。僧帽弁形成術では人工弁輪を用いる事が多く、伸びてしまった弁尖(弁組織)を切除して形を整えて縫い合わせたり、人工腱索といいゴアテックス(人工繊維)でできた糸を用いて弁の機能を再建します。大動脈弁に対する形成手術は、人工血管を用いて大動脈弁の形状を整えてゆく方法が主に行われています。リモデリング法やリインプランテーション法といいます。大動脈弁狭窄症のように修復が困難な病気もありますが、可能であればご自分の弁を修復して用いた方がより良いと考えられています。

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心臓血管外科医 菊地慶太