なぜMICS(低侵襲心臓手術)が良いのでしょうか?

胸骨正中切開による通常の心臓手術の場合には、最後にワイヤーで胸骨をしっかりと固定します。しかし手術後の動作。特に起き上がる時などに、手をついたり体をひねったりすると痛みが強くなりこれまでの動作が行いにくく不自由を感じます。また手術後退院してから3か月間は自動車の運転を控えていただいております。MICS(低侵襲心臓手術)では胸骨自体を切らないか切っても部分的ですので、術後のこれらの不自由さがとても少なくなります。手術後に手をついたり体をひねることも容易です。そのためリハビリの進行も早く術後1週間で多くの患者様が退院できる状態になります。更に退院してから2週間後に外来診察をさせていただき、問題がなければ車の運転をしたり、これまでのお仕事を行ってもいいですよとお話しをしています。このようにMICS(低侵襲心臓手術)の大きな利点は通常の心臓の手術より術後の回復が早く、もとの日常の生活に早く戻ることができる事と言われています。また糖尿病をお持ちの患者様では傷の治りが悪いことがあります。通常の心臓手術における胸骨正中切開では、切った胸骨の感染症である胸骨骨髄炎を起こすことがあります。MICS(低侵襲心臓手術)では基本的に胸骨を切らないので胸骨骨髄炎は起こりません。いわゆる重症感染症のリスクも少なくなります。また傷も小さいので手術において輸血を必要とする可能性が低いのでより安全なのです。

東京ベイ浦安市川医療センター 心臓血管外科

菊地慶太