CBCラジオ「健康のつボ~心臓病について~」 第3回(平成30年6月21日放送内容)

今回は低侵襲心臓手術(MICS)についてのお話です。

 

(小高)日本人の死因の第2位となっている「心臓の病気」を中心に、健康と最新医療について専門の先生に教えていただいているコーナーです。ゲストは一宮西病院ハートセンター・センター長で、心臓血管外科統括部長の菊地慶太先生です。よろしくお願いします。

(菊地)よろしくお願いします。

(つボイ)今までいろんなことを教えていただいたんですけれども、先生は外科の立場でやられる。外科でも、なにか聞きなれない「低侵襲心臓手術」?

(菊地)そうです。

(小高)この間の回のときに、少しだけこの「低侵襲心臓手術」について、従来のガガッと胸を切って!開けて!という手術のイメージがありますけれど、そうではなくて、なるべく小さい傷口で、間単に言うと“隙間から手術をやる”という、そんな感じの。

(菊地)えぇ、従来の手術というのは胸の真ん中の縦長の胸骨を大きく切って手術をしています。この「低侵襲心臓手術」というのは、例えば胸骨を半分くらいしか切らないで小さな傷で行ったり、あとは肋骨の間から小さな傷で、だいたい8cm前後の傷で行うことが多いです。すると、やはり体への負担が少なくて回復が早いといわれていますし、例えば輸血の量が少なかったり、痛みも少なかったりというようなことが言われています。

(つボイ)ということは反対に、今までは胸骨をガッと切ったり、肋骨が邪魔だと肋骨を切ったり、そんな形で手術をやるんですか?

(菊地)そうですね、ただ「今までの治療が悪い」というわけではないんですね。これはこれで安全性が確立されていますし、非常にいい治療だと思います。ただし、次のステップに我々外科医も行かなくてはいけないと思うんですね。なるべく皆さんのニ-ズに応えて、なおかつ安全性を高めて、同じ内容の医療が小さい傷で、体に負担なくできるというのが「低侵襲心臓手術」というもの。実は先日、90歳の方の「低侵襲心臓手術」である「冠動脈バイパス術」を行ったのですが、翌日からご飯を食べて、歩く練習をして。

(小高)翌日!?

(菊地)そうですね。90歳の方ですが、1週間ぐらいで、元ご紹介いただいた病院で次の治療のために転院という形になりました。すごくお元気でいらっしゃいました。

(つボイ)90歳の方って体の抵抗力とか体力とかがちょっと我々よりも落ちる方でも、そういうような期間でいいわけですか。

(菊地)例えば「低侵襲」ということにこだわっていくのであれば、以前もお話したとおり、内科の治療と外科の治療をミックスして、ハイブリットといいますが、そういうような治療を行うことでさらに皆さんの体への負担が少なく、なおかつベストな医療、内科と外科の治療の良い所を取って“良いとこ取りの治療”ができるわけです。特にその患者さんは、内科の「ステント治療」と、外科の小さい傷の「バイパシ手術」を組み合わせることによって、非常に早く退院できるわけです。

(小高)この「低侵襲手術」というのは、心臓の様々な病気があるとお聞きしていますが、この病気には向いているとかこの病気には向いていないとかあるんですか?

(菊地)そうですね。私は特に「冠動脈バイパス術」を専門にはやっておりますけれど、「弁膜症」も行っております。僧帽弁(そうぼうべん)、心臓の扉の病気ですね、僧帽弁の治療も「低侵襲心臓手術」でできますし、大動脈弁弁膜症の治療もできます。あとは先天性心疾患という、小さいころから心臓に穴が開いているような病気も、小さい傷での治療が可能なんですね。今では様々なものにこの治療が応用されてきています。

(つボイ)僕らは心臓の手術をしたことのある人間ですけれど、やったことない人は、心臓の手術というと非常に怖いというか。

(小高)心臓なんでね、死に直結みたいなイメージがありますね。

(つボイ)メスが入ったりとか聞くと「えぇっ!?」と思うんですけれども。

(菊地)手術というと確かに怖いかもしれませんが、今は小さい傷でもできますし、体への負担がすごく少なくできるんですね。そうすると、せっかくそういう医療がいろんな所で受けられるのに、そこから逃げていると、良いタイミングを逃してしまうことがあります。我々専門家からすると、少しでもそういう方が怖くなく医療を受けられるというのがすごく大事ではないかなと思います。

(小高)そして私たちが心掛けるのは、なるべく早く、気づいたら先生に相談しに行く、と。

(菊地)そうですね。

(つボイ)それは大事だと思いますね。

(小高)また来週もお話を伺います。

(菊地)よろしくお願いいたします。

(小高)一宮西病院の菊地慶太先生でした。「健康のつボ~心臓病について~」でした。

 

一宮西病院 心臓血管外科医 菊地慶太

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