人工弁(生体弁と機械弁)について

人工弁は大きく2種類あります。1つは金属でできた機械弁。もう1つは牛や豚など生体組織から作られた生体弁です。どちらもとても高性能で品質の良いものですが、それぞれ一長一短があります。今回はその違いについてお話をします。

機械弁:耐久性(30年以上ともいわれます)が良く、とても長持ちです。但し金属に血液がふれると血栓を作ってしまうために、何もしないと機械弁に血栓がついてしまいます。これでは機械弁の動きが悪くなったり、脳塞栓を発症するため、血栓を作らなくする作用を持つ抗凝固薬(ワーファリン)を飲む必要があります。ワーファリンは機械弁をいれたら必ず一生涯内服しなくてはなりません。

生体弁:耐久性は15年で80%以上の患者さんに問題なく(再手術などなく)、こちらも良好です。生体弁は機械弁に比べて血栓を作りにくいために、術後の3か月くらいはワーファリンを内服していただきますが、それ以降は基本的には不要です。食品の制限もありません。

実際のところは、最近の生体弁はとても性能(耐久性など)が良く、60代の患者様にも多く用いられています。たとえば他の部位に病気が見つかり手術が必要になった時になど、ワーファリンは中止しますが、その代わりにヘパリンという抗凝固薬を点滴で続ける必要があります。機械弁が入ると血栓予防は必ず行わなくてはならない事が1つのリスクになります。そのことを考えると、なるべくワーファリンを内服しないで済む方法を選択するのも1つの考えです。但し、あまり若い時期に生体弁をいれてしまうと、生体弁の劣化によって再手術が必要になる事がありますから、ご自分の生活や生き方に合った人工弁を選択することが大切です。

ワーファリン:血栓(血のかたまり)ができるのを予防するお薬です。 抗凝固薬ともいいます。いわゆる血液をさらさらにするお薬です。INRという血液検査の結果を見て、ワーファリンを飲んで頂く量を決定します。場合によっては多くの量を飲む必要があります。これを飲んでいる間は、納豆、やクロレラ、青汁などのビタミンKが大量に入っている食物は食べてはいけません。

心臓血管外科医 菊地慶太