大動脈弁狭窄症について

今日は大動脈弁の弁膜症のなかでも近年とても多い大動脈弁狭窄症について少しお話をします。以前はリウマチ熱(A群溶連菌による感染症)という病気が原因で発症する弁膜症、いわゆるリウマチ性心臓弁膜症が多くみられて、この病気による方が心臓弁膜症に対する手術治療の主な患者様でした。弁自体の病気であり弁が硬化するため、弁の形成術は困難であり、人工弁置換術が主な治療法でありました。また一つの弁だけに発症するわけではなかったので、連合弁膜症と言って、大動脈弁と僧帽弁の二つの弁に病気が進行し、大動脈弁と僧帽弁を同時に変える二弁置換術も多く行われました。最近ではリウマチ熱に対する治療がしっかりしているのでリウマチ性弁膜症は少なく、かわって大動脈弁では動脈硬化症が原因となる大動脈弁狭窄症が非常に多くなりました。現在大動脈弁の弁膜症のほとんどが、この動脈硬化性の大動脈弁狭窄症です。この弁膜症は、加齢とともに動脈硬化症が進行することが原因です。動脈硬化が原因であるので、大動脈弁に石灰化が起こり、弁尖(弁の柔らかい皮のような組織で血液を受け止めるところです。弁の開閉の役割を担っています)や弁輪部(弁が大動脈にくっついている部分です)の組織が石のように硬くなる状態になり、これによって大動脈弁の動きが悪くなります。ご高齢の患者様が多く、動脈硬化症による余病も合併しています。動脈硬化による余病とは、狭心症や脳血管障害、大動脈の石灰化や腎機能障害などを指します。ですから大動脈弁の手術に冠動脈バイパス術を同時に行う事も日常です。ご高齢の患者様が多く80歳を超えた患者様の手術も多く行っています。心臓血管外科医 菊地慶太