自己心膜

心膜ってご存知ですか?心臓は心嚢という袋のようなものの中に入っています。この心嚢を形成している膜が心膜です。薄いものですがしっかりした組織です。ただし心膜というと心臓領域では牛の心膜なども含まれます、ですから患者さんのご自身の心膜のことを自己心膜といいます。この自己心膜はしっかりした組織なので、心臓の治療に応用されます。例えば大動脈弁の再構築にはこの自己心膜を用いて行うOZAKI法もあります。また僧帽弁形成術では、切除した僧帽弁の弁尖を自己心膜で補填することもあります。肺動脈の再建に用いたりと様々に応用され使われています。なぜかというと血栓を形成しにくいからです。要するに抗凝固薬を飲まなくてよいのです。ただし過信は禁物。長期の耐久性は何とも言えないところがあります。いいという報告もあれば、今一つという報告もあります。でも患者さんによっては救世主のような素材でもあります。何を目的に自己心膜を使用するかが大切です。心臓血管外科医 菊地慶太