大動脈瘤という病気  ご存知ですか?

大動脈瘤という病気、聞いたことありますか?

大動脈は心臓から送り出された血液を全身に送り大事な役割をしています。大動脈は心臓から出た後、一度上の方に向かっていき脳や手に行く血管を出して、その後背中の方に弧を描くように曲がって下の方(足の方)に進んでゆきます。胸の中を通った後、横隔膜を越えて腹部に到達し、お臍のあたりで二股に分岐し鼠頸部を介して足に向かいます。この大動脈は、横隔膜の上を胸部大動脈、横隔膜から下を腹部大動脈といいます。動脈硬化の 進行などにより血管が脆(もろ)くなると、大動脈は風船のように膨らんできます。これが大動脈瘤です。動脈硬化症によって脆くなった大動脈は、風船が膨らむように膨れ始めたところを起点に、徐々に大きくなります。血圧が高かったり、その他の動脈硬化の因子(高脂血症、糖尿病、喫煙、肥満、高尿酸血症・・他。)の管理が悪いとどんどん大きくなってしまい大きな瘤を形成してしまうのです。瘤はやがて血圧に耐えられなくなって破けてしまいます。これを大動脈瘤の破裂といいます。破裂してしまうと助からなくなってしまいます。当然ですがその前の治療が必要になります。

大動脈瘤は厄介なことにほとんどの患者様で症状が出ません。多くの場合に無症状で進行(拡大)するため、見つかりにくい場合があります。

胸部大動脈瘤は、場所によっては嗄声(声がかれる)が出現したり、食事や水などを飲んだ時にむせたりする反回神経障害の症状が出ることがあります。しかしながら多くの場合胸部レントゲン検査、CT検査などで偶然見つかります。

腹部大動脈瘤は、ほとんど症状は出ません。お腹の超音波検査やCT検査で偶然見つかります。

大動脈瘤の患者様は破裂して、ショック状態になって初めてその病気に気が付く方もいらっしゃいます。ご家族の肩が、“いままで一度も医者にかかったこともないのに”とおっしゃる患者様も決して少なくありません。いろいろとお話を伺うと、病院に行かなかっただけという方もいらっしゃいます。

普段から血圧が高かったり、コレステロール値が正常ではない方、また糖尿病の患者様や喫煙されている方は十分な注意が必要です。通常の健康診断などの検査で異常があった場合にはこのような病気が隠れていないか調べてもらうことも重要です。

心臓血管外科医 菊地慶太