大動脈解離に対するステントグラフト治療(TEVAR)

急性大動脈解離人工血管置換術後、ある一定の確率で人工血管を吻合したその先の大動脈が太くなってしまい、瘤化してしまう患者様がいらっしゃいます。これまでは手術が一般的でしたので、拡大するまで待って(大動脈がおおよそ6㎝位の直径になるまで)手術を行っていました。しかし、昨年くらいからそのような患者様に対するTEVAR(胸部大動脈ステントグラフト内挿術)のとても良い結果が報告されてきています。解離して拡大し始めた大動脈が元に戻っていくような結果が得られるのです。できれば1年以内に、かつ大動脈の計は4㎝を超えて・・・。などいろいろと条件があるようですが、大動脈解離に対する予防的な治療としてとても有効ではないかと考えます。何故なら大動脈の直径が6㎝を超えるようになるまで(破裂の危険度が上がるまで)待つということは、それだけ手術の危険性も上がるわけです。解離に場合は一部分が太くなるわけではないので、人工血管に取り換える範囲も長くなってしまう可能性が高くなります。なので大動脈がとても太くなってから=破裂のリスクが上がってから手術。というのは、どうもうまくないと思います。ある一定の条件があると大動脈の拡大は進んでいきます。そのようなグループの患者様は、拡大手術を行う前に予防的な治療で、手術自体を未然に防ぐ方がよっぽど安全ではないかと思います。下行大動脈における大動脈解離に対するTEVARは予防的な意味も含めて非常にいい治療法ではないかと思います。

写真1写真5心臓血管外科医 菊地慶太