CBCラジオ「健康のつボ~心臓病について~ 第8回(平成30年7月26日放送内容)

第8回(平成30年7月26日放送内容)の内容です。今回は冠動脈バイパス術とMICS CABGについてです

 

(小高)このコーナーは、日本人の死因の第2位となっている「心臓の病気」を中心に、健康と最新医療について専門の先生に伺っているコーナーです。ゲストは一宮西病院のハートセンター・センター長で、心臓血管外科統括部長の菊地慶太先生です。よろしくお願いします。

(菊地)よろしくお願いします。

(小高)心臓の病気にもいろいろありますが、最近は「狭心症」と「心筋梗塞」についてね。

(つボイ)ずっとお話を伺ってまいりました。

(小高)その治療法もいろいろありますよと伺いました。

(つボイ)3本柱があると聞きました。

(小高)先生は外科医でいらっしゃるので、担当するのは「冠動脈バイパス術」?

(菊地)そうですね。「冠動脈バイパス術」を専門に行っています。

(小高)でも最初のほうに聞いた、先生は「低侵襲手術」をやっていますよと仰っていましたけれど、このバイパス術も低侵襲でやるんですか?

(菊地)そうです。どのような治療かといいますと、従来の冠動脈バイパス術というのは、胸の真ん中にある胸骨という骨を縦に真っ直ぐ切ってしまって、グッと開いて中にある心臓にアプローチしていく方法なんですね。この「低侵襲冠動脈バイパス術」というのは、左胸のちょうどおっぱいの下の辺りを8cmくらい切開して、従来の冠動脈バイパス術と同じように治療を行う方法なんです。

(小高)そんなこと出来るんですか・・・。

(菊地)そうですね。我々がなぜそれを考えているかというと、胸の骨は大きく切ってしまうと、決して悪い方法ではないんですが、やはりしばらくの間は不自由な生活になってしまうんですね。

(つボイ)負担が大きいですよね。

(菊地)はい。痛みもやはりあります。この「低侵襲冠動脈バイパス術(MICS CABG)」ですと、胸骨を大きく切ることはありません。胸の脇を8cmぐらいですし、胸骨がしっかりしていると両手がしっかり使えるんです。ですから、手術のあとの回復や日常生活への戻りが早いといわれています。胸の真ん中を切る従来の手術だと車の運転は2~3か月は控えていただきたいというお話をするんですが、この「低侵襲冠動脈バイパス術」ですと、だいたい退院のあと2週間目に外来にいらしていただいて、その時点で問題なければ運転もどうぞと、日常生活にすべて戻ってくださいとなります。

(つボイ)かなり負担が違いますね、患者さんの。

(菊地)実際のところは、これから色々データを取らなければいけないので、われわれ病院も世界で行う多施設合同研究に参加してデータを取っていく必要があると考えています。やはりこの方法(低侵襲冠動脈バイパス術)で一番大切なことは、従来のバイパス術と同等の治療ができないと意味がありません。傷が小さいだけの手術ではない、というところがとても重要なんですね。従来行っている冠動脈バイパス術というのは、ちょっと分かりにくいのですが、胸骨というネクタイみたいな骨の裏側に内胸動脈という2~3mmの血管があります。この血管が心臓のバイパス術にはとても良いといわれているんですね。右と左に2本あるんですが、これを使って「冠動脈バイパス術」を行いましょうというのがガイドラインでも推奨されています。「低侵襲バイパス術」では、この両側の内胸動脈を使うことが可能なんですね。ですから従来のバイパス術とほぼ同様のバイパスが行えるといわれています。

(小高)そりゃ8cm切るだけで(手術を)やるとなると患者さんの負担は楽でしょうけど、先生の負担は大きいですよね。

(つボイ)先生のが大変ですね。

(菊地)そうですね。でもわれわれ外科医はある意味ではちょっと“オタク”的なところがあって、「この道で皆さんのために!」と思って日夜いろんな勉強をしているわけですけれども、やはり1つの道を突き詰めていくと、いろんなことを毎日考えながら仕事をしているんですよ。

(小高)より負担は少なく、ても治療は完璧に!を目指していくという。

(菊地)自分が受けたときにどういう医療がいいかをまず真っ先に考えています。

(つボイ)自分の事として考えるわけですね。

(菊地)だって自分や自分の家族が受けないような治療を患者さんに提供はできないですよね。ですから、やはり一番患者への負担が少なくて、自分であれば早く職場に復帰できて、なおかつ長持ちをするような治療を色々考えているわけです。

(小高)はい。

(菊地)あとは心臓のバイパスと内科のステント治療を合わせて、ハイブリッド治療といいますけれど、皆さんの負担がなるべく軽く、なおかつ長期的に良い成績、皆さんが不自由なく暮らせる治療です。こういうハイブリッド治療も積極的に行うことが、これからの医療では大事ではないかなと思います。

(つボイ)なるほど!分かりました!

(小高)お話を伺いました。ありがとうございました。一宮西病院の菊地慶太先生でした。「健康のつボ~心臓病について~」でした。

一宮西病院 心臓血管外科医 菊地慶太

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