大動脈基部形成術をご存知ですか?

大動脈弁輪拡張症という疾患があります。大動脈基部が拡大する病気です。大動脈基部という一連の構造には、大動脈弁、バルサルバ洞、冠動脈入口部、STジャンクションがあり、これらによって大動脈基部が構成されています。心臓の出口(左心室から大動脈へ血液を送り出す部位)には大動脈弁がありここが出口の扉になります。その後大動脈弁を構成するバルサルバ洞、それと冠動脈(心臓自体に血液を送る動脈)の入り口があり、STジャンクションというバルサルバ洞と上行大動脈の接合部があります。この一連の構造が拡大して大動脈弁がうまく閉まらなくなってしまい、大動脈弁閉鎖不全がおこります。そうなると心臓への負担が強くなり心臓が大きくなってしまいます(心拡大)。この様な病気を大動脈基部拡張症(AAE)といいます。従来からこの病気の治療には、大動脈基部置換術ベントール法)といい、大動脈の基部を人工血管と人工弁で作り直す術式が行われています。この方法に代わるべく大動脈基部形成術(自己弁を残して形成する方法)が最近特に注目されています。リモデリング法リインプランテーションという2つの術式があります。どちらも人工血管を用いて大動脈基部を作り直しますが、自分の大動脈弁を温存して人工弁を用いない方法です。ずいぶん前から報告されていますが、再現性が難しい術式でした。最近これらの術式における、大動脈弁の形成に対する再現性のある方法が報告され安定した結果が得られてきているので脚光を浴びています。IMG_0185心臓血管外科医 菊地慶太