オフポンプ冠動脈バイパス術に用いるスタビライザーについて

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OPCAB(心拍動下冠動脈バイパス術)では心臓を動かしたままで手術を行います。この時心臓の表面だけを固定して動きを押さえる器具をスタビライザーと言います。いろんな分野で同じ名前のものがあると思いますが、心臓血管外科領域ではスタビライザーといえばOPCABで用いる機械です。主流のものは全て吸引型スタビライザーで、先端に陰圧をかけられるようになっていて、抑える部分は心臓の表面を吸付けます。これによって抑える部位が心臓から動かなくなります。そうしたらアームの部分を固定して完了です。このスタビライザーが出現し、日本で一般的に用いられるようになったのが1999年くらいです。ここからOPCABがとても速い勢いで普及しました。現在では60%以上の冠動脈バイパス術は人工心肺を用いないOPCABで行われています。医療の進歩は医療機器(デバイス)の進化でもあります。将来はもっと進んだ医療機器が出現し、またガラッと治療方法が変わると思います。それと同時に外科医は技術も向上しなくてはなりません。デバイスに頼った医療を行っているといつかしっぺ返しが来ます。技術の向上と後進の育成が大事です。でも心臓外科医に一番大切なものは“ハート”ですね!

心臓血管外科 菊地慶太