冠動脈バイパス術(CABG)について

狭心症や心筋梗塞などの心臓自体の血流障害に対して行う手術が“冠動脈バイパス術”です。心臓の血管“冠動脈”は右に1本(右冠動脈)、左に2本(左冠動脈:前下行枝、左回旋枝)あります。この冠動脈に狭窄が起きたり詰まってしまったときに外科治療として行う方法です。この“冠動脈バイパス術”は冠動脈の狭窄部位を処置するのではなく、その先の心臓の筋肉へ十分な血液を供給するために迂回路を作成する手術です。内胸動脈といって胸の真ん中に位置する胸骨の両側裏面にある血管を用いたり、手の動脈(橈骨動脈)や足の静脈(大伏在静脈)を用いて迂回路を作成します。

冠動脈バイパス術(CABG:Coronary artery bypass grafting)には従来行われていた人工心肺を用いて心臓を止めて吻合する方法(最近ではこの方法をConventional CABG:コンベンショナル シーエービージーと言ったりOn pump CABGといいます。)と、人工心肺を用いずに心臓が動いた状態で行う心拍動下冠動脈バイパス術OPCAB:Off pump CABG、オプキャブ)があります。日本では後者のOPCABが全体の60%以上を占めており、OPCABが標準術式といっても過言ではありません。何が違うかというと、人工心肺を用いないために体への負担が少なく、肺や腎臓が悪い方や脳障害などのある患者様には有利な方法です。輸血を行わずに済んだり、必要になってもごく少量で済みます。実際には心臓が動いた状態で表面にスタビライザーという局所固定器を使用して吻合します。正確で綺麗な吻合を行うには高い技術が必要になります。

OPCABと私の付き合いは1999年にシンガポールナショナルハートセンターへ留学した時から始まりました。その時のボスがOPCABを始めたので、一緒に多くの事を学びました。その後2000年に聖マリアンナ医科大学病院へ戻り、聖マリアンナ医科大学病院における初めてのOPCABを執刀しました。2006年に順天堂大学に赴任しさらに磨きをかけて現在に至っています。冠動脈バイパス術は任せてください!

心臓血管外科医 菊地慶太